日本で働く外国人労働者には、さまざまな在留資格(ビザ)が存在し、それによって働ける職種や転職の自由度が大きく異なります。
「技能実習」や「特定技能」のように転職が制限されるものもあれば、「専門的・技術的分野」や「身分に基づくもの」のように比較的自由なものもあります。
本記事では、在留資格ごとのキャリアパスの違いを分析し、どの資格がどのような職種や昇進のチャンスを持つのかを解説します。
1. 在留資格ごとの雇用状況
「令和5年外国人雇用実態調査」のデータによると、外国人労働者は以下のように在留資格ごとに分布しています。
在留資格 | 外国人労働者数 | 割合 |
---|---|---|
専門的・技術的分野 | 約57万人 | 35.6% |
身分に基づくもの | 約49万人 | 30.9% |
技能実習 | 約36万人 | 22.8% |
特定技能 | 約10万人 | 6.2% |
「専門的・技術的分野」「身分に基づくもの」が約66%を占めており、転職の自由度が比較的高い人が多いことが分かります。
一方で、「技能実習」や「特定技能」は、特定の業種・職種に限定されるため、キャリアパスが制限される傾向にあります。
2. 在留資格ごとのキャリアの特徴と課題
① 専門的・技術的分野(エンジニア・研究者など)
- 主な職種:ITエンジニア、機械・電気技術者、研究者、通訳・翻訳
- 特徴:
✅ 高度な専門スキルを活かして働ける
✅ 転職の自由度が高く、昇進・昇給のチャンスが多い
✅ 「永住権」取得を目指しやすい - 課題:
❌ 日本語能力が求められる職種が多い
❌ 高度なスキルを求められ、誰でも取得できるわけではない
この資格を持つ外国人労働者は、比較的高い給与を得られ、昇進の可能性も高いです。
② 身分に基づくもの(永住者・日本人の配偶者など)
- 主な職種:自由(業種制限なし)
- 特徴:
✅ 日本人と同じ条件で働ける
✅ 転職の自由度が最も高い
✅ 将来的に「日本国籍取得」も可能 - 課題:
❌ 特定の職種やスキルが保証されているわけではない
❌ 日本語ができないと転職に不利
「身分に基づくもの」の在留資格を持つ外国人は、どの業種にも就職できるため、キャリアアップの自由度が最も高いです。
また、日本人と同等の労働条件で働けるため、正社員として安定したキャリアを築きやすいのもメリットです。
③ 技能実習(工場・建設・農業・介護など)
- 主な職種:製造業、建設業、農業、介護など
- 特徴:
✅ 日本で働きながら技術を学べる
✅ 一定期間後に「特定技能」に移行できる可能性がある - 課題:
❌ 転職が基本的に不可
❌ 労働時間が長く、給与が低い傾向
❌ 日本語能力が不十分な場合が多い
技能実習は、「学ぶこと」が目的とされているため、同じ職場で3~5年間働くことが義務付けられています。
しかし、最近では「特定技能」に移行する道もあり、日本でキャリアを築くチャンスが広がってきています。
④ 特定技能(介護・建設・外食業など)
- 主な職種:介護、建設、外食、宿泊業、農業など
- 特徴:
✅ 「技能実習」と異なり、転職が可能
✅ 最大5年間日本で働ける
✅ 一定の条件を満たせば「永住権」取得の道もある - 課題:
❌ 業種が限定されている
❌ 「特定技能1号」は家族の帯同ができない
特定技能は、技能実習よりも転職の自由度が高く、労働者としての権利が認められている点が特徴です。
特に、「特定技能2号」(建設業・造船業)になると、無期限での滞在が可能となるため、長期的なキャリアパスを考える上で重要な資格です。
3. キャリアアップのために知っておくべきこと
① 在留資格の変更を視野に入れる
技能実習や特定技能の労働者は、「専門的・技術的分野」に移行できるようスキルアップを目指すことが重要です。
例えば、ITの資格や介護福祉士の資格を取得すれば、より安定した職に就くことが可能です。
② 日本語能力を向上させる
どの在留資格でも、日本語ができるとキャリアアップの可能性が大幅に向上します。
特に、JLPT N2以上の資格があると、より良い職種や待遇の仕事に就けることが多いです。
③ 転職の自由度が高い資格を取得する
「技能実習」「特定技能」のままでは、職種が限られ、昇進のチャンスも少ないです。
そのため、長期的に日本で働きたい場合は、「専門的・技術的分野」や「身分に基づくもの」へ移行できるよう計画を立てましょう。
4. まとめ
外国人労働者のキャリアパスは、在留資格によって大きく異なります。
- 「専門的・技術的分野」「身分に基づくもの」 → 転職の自由があり、昇給やキャリアアップの可能性が高い
- 「技能実習」「特定技能」 → 業種が限定されており、転職の自由度が低い
しかし、スキルアップや在留資格の変更を目指すことで、より良いキャリアを築くことが可能です。
日本で長く働きたい場合は、自分の在留資格の特徴を理解し、計画的にキャリアを積み上げることが大切です。