日本は「長時間労働の国」と言われることが多く、外国人労働者にとっても働きやすい環境かどうかは重要なポイントです。
では、実際に外国人労働者の労働時間や休日はどのような状況なのでしょうか?
「令和5年外国人雇用実態調査」のデータをもとに、日本の外国人労働者の労働時間の実態を分析し、業種や在留資格ごとの違い、日本人労働者との比較、改善の可能性について解説します。
1. 外国人労働者の平均労働時間はどれくらい?
外国人労働者の労働時間をみると、一般労働者の月間平均労働時間は155.8時間、超過労働(残業)は19.8時間でした。
この数字は、日本人労働者の平均と大きな差はなく、外国人も日本人と同等の労働環境で働いていることが分かります。
しかし、在留資格や業種によって労働時間にばらつきがあります。
在留資格 | 月間労働時間(所定内) | 残業時間(超過労働) |
---|---|---|
専門的・技術的分野 | 158.6時間 | 17.5時間 |
特定技能 | 159.9時間 | 23.8時間 |
技能実習 | 163.2時間 | 26.2時間 |
身分に基づくもの | 149.5時間 | 18.5時間 |
「技能実習」「特定技能」の労働者は、残業が多い傾向にあり、長時間労働になりやすいことがわかります。
一方、「身分に基づくもの」や「専門的・技術的分野」の労働者は、比較的安定した労働時間で働いています。
2. 業種別の労働時間の違い
業界によっても労働時間は異なります。
業種 | 月間労働時間(所定内) | 残業時間(超過労働) |
---|---|---|
製造業 | 161.8時間 | 22.5時間 |
建設業 | 165.3時間 | 24.1時間 |
介護・福祉 | 156.4時間 | 18.2時間 |
卸売業・小売業 | 154.2時間 | 17.9時間 |
特に、建設業や製造業では労働時間が長めになっており、体力的な負担も大きいことが推測されます。
一方で、介護・福祉業界は労働時間が比較的短く、残業も少ない傾向があります。
3. 外国人労働者の休日はどうなっている?
日本の労働基準法では、**「週1回以上の休日」**が義務付けられていますが、実際の休日日数はどうなっているのでしょうか?
調査結果によると、外国人労働者の年間休日数は平均100日程度で、日本人の平均(110~120日)と比べてやや少ない傾向があります。
在留資格 | 年間休日数(平均) |
---|---|
専門的・技術的分野 | 115日 |
技能実習 | 90日 |
特定技能 | 95日 |
身分に基づくもの | 110日 |
特に、「技能実習」「特定技能」の労働者は年間休日が少なく、週1日のみの休日で働いているケースも多いことが分かります。
一方、「専門的・技術的分野」や「身分に基づくもの」の労働者は、日本人と同等の休日日数を確保できています。
4. 日本人労働者と比較して、外国人は働きすぎ?
日本人と外国人の労働時間・休日を比較すると、全体的に大きな差はないものの、特定の在留資格では長時間労働になりがちです。
労働者の種類 | 月間労働時間 | 超過労働時間 | 年間休日数 |
---|---|---|---|
日本人(一般労働者) | 152時間 | 15時間 | 110~120日 |
外国人(一般労働者) | 155.8時間 | 19.8時間 | 100日程度 |
外国人(技能実習) | 163.2時間 | 26.2時間 | 90日 |
特に「技能実習」の労働者は、日本人よりも労働時間が長く、休日が少ないことが分かります。
これは、「技能実習」制度が「学びながら働く」ことを目的としているため、労働条件が厳しく設定されがちであることが要因です。
5. 外国人労働者の労働環境を改善するためには?
① 企業の労働時間管理の徹底
長時間労働が常態化しないように、企業は労働時間を適切に管理する必要があります。
特に「技能実習」「特定技能」の労働者は、残業が多くなりがちなので、労働基準法を守るためのチェック体制を強化することが重要です。
② 有給休暇の取得促進
日本の法律では、**「6ヶ月以上勤務した労働者には有給休暇の取得権利がある」とされています。
しかし、外国人労働者の中には、「有給休暇が取れることを知らない」**人も多く、企業側が積極的に取得を推進する必要があります。
③ 外国人労働者の声を聞く仕組みづくり
外国人労働者が、長時間労働や休日の少なさに不満を感じた場合、相談できる窓口を設けることが大切です。
労働組合や支援団体が積極的に関与し、外国人が働きやすい環境を整えることが求められます。
6. まとめ
データをもとに分析すると、日本の外国人労働者の労働時間は、日本人とほぼ同じかやや長めであることが分かりました。
特に、「技能実習」や「特定技能」の労働者は、長時間労働や休日の少なさという課題に直面しています。
企業側の適切な労働時間管理や有給休暇の取得促進、外国人労働者の意見を反映する仕組み作りを進めることで、より良い労働環境を実現できるでしょう。
日本で働く外国人労働者が、無理なく働き、充実した生活を送れるよう、労働環境の改善が今後の課題となっています。