日本で働く外国人労働者の数は年々増加していますが、日本人労働者と比べて適正な賃金を受け取っているのでしょうか?
「令和5年外国人雇用実態調査」のデータをもとに、外国人労働者の平均賃金と日本人労働者の賃金を比較し、その違いが生じる理由や改善策について解説します。
1. 外国人労働者の平均賃金と日本人労働者との比較
まず、外国人労働者の「一般労働者(正社員・契約社員など)」の月間平均給与は267,700円でした。
これは、日本人労働者と比べてどの程度の違いがあるのでしょうか?
① 日本人労働者との賃金比較
労働者の種類 | 月間平均給与 | 年収換算(賞与含む) |
---|---|---|
日本人(全体平均) | 約307,000円 | 約4,600,000円 |
外国人(全体平均) | 約267,700円 | 約3,900,000円 |
技能実習生 | 約204,100円 | 約3,000,000円 |
特定技能 | 約232,600円 | 約3,500,000円 |
データからわかる通り、外国人労働者の平均賃金は日本人より約12~13%低いことが分かります。
特に「技能実習」や「特定技能」の外国人は、日本人よりも大幅に低い賃金で働いているケースが多いです。
2. 在留資格ごとの賃金格差
外国人労働者の賃金は、在留資格によっても大きく異なります。
在留資格 | 月間給与 | 所定内労働時間 | 超過労働時間 |
---|---|---|---|
専門的・技術的分野 | 285,900円 | 158.6時間 | 17.5時間 |
特定技能 | 232,600円 | 159.9時間 | 23.8時間 |
技能実習 | 204,100円 | 163.2時間 | 26.2時間 |
身分に基づくもの | 302,300円 | 149.5時間 | 18.5時間 |
「専門的・技術的分野」や「身分に基づくもの」の労働者は日本人と同等かそれ以上の賃金を得ている一方で、「技能実習」「特定技能」の労働者は低賃金の傾向があります。
3. 業種別の賃金格差
業種ごとに外国人労働者と日本人労働者の賃金を比較すると、違いがさらに明確になります。
業種 | 日本人平均給与 | 外国人平均給与 |
---|---|---|
製造業 | 約290,000円 | 約230,000円 |
介護・福祉 | 約280,000円 | 約220,000円 |
建設業 | 約320,000円 | 約250,000円 |
卸売業・小売業 | 約270,000円 | 約210,000円 |
外国人労働者の賃金は、日本人労働者と比べて約10~20%低い傾向があります。
特に、介護・福祉、建設業では顕著な賃金格差が見られます。
4. 外国人労働者の賃金が低い理由
では、なぜ外国人労働者の賃金は日本人より低いのでしょうか?
① 雇用形態の違い
外国人労働者の雇用形態を見ると、正社員の割合が低く、契約社員や期間労働者として雇用されるケースが多いことが分かります。
雇用形態 | 日本人(割合) | 外国人(割合) |
---|---|---|
正社員・正職員 | 70% | 52.7% |
契約社員・派遣社員 | 20% | 30% |
アルバイト・パート | 10% | 17.3% |
正社員として雇用される割合が低いため、賞与(ボーナス)や昇給の機会が少なく、賃金が低くなりがちです。
② 日本語能力の影響
日本語能力が高い労働者は、より高い賃金を得られる傾向にあります。
日本語能力 | 月間給与 |
---|---|
JLPT N1レベル | 約300,000円 |
JLPT N2レベル | 約280,000円 |
JLPT N3レベル以下 | 約230,000円 |
特に、JLPT N2以上の日本語能力を持つ外国人労働者は、日本人と同等の賃金を得る傾向があります。
日本語が不自由な場合、低賃金の単純労働に従事するケースが多いのが現状です。
③ 在留資格による制約
「技能実習」や「特定技能」の在留資格を持つ労働者は、転職の自由が制限されているため、賃金交渉が難しいという問題があります。
一方、「専門的・技術的分野」や「身分に基づくもの」の労働者は、転職が容易なため、より良い条件の仕事を選びやすいです。
5. 賃金格差を解消するための対策
① 外国人労働者の正社員登用を増やす
企業側が、外国人労働者を正社員として雇用する割合を増やせば、賃金格差は縮小します。
特に、「特定技能」の労働者は、企業の努力によって正社員登用が可能です。
② 日本語教育の支援
外国人労働者がJLPT N2以上の資格を取得すれば、賃金アップの可能性が高まるため、企業が日本語学習を支援することが有効です。
- 企業内の日本語研修の提供
- 日本語試験(JLPT)受験費用の補助
③ 転職の自由度を高める制度改革
「技能実習」制度の見直しが進めば、外国人労働者が適正な賃金を求めて転職しやすくなり、低賃金労働を強いられることが減ると考えられます。
6. まとめ
データから明らかなように、外国人労働者の賃金は日本人より10~20%低い傾向があります。
特に、「技能実習」や「特定技能」の労働者は、低賃金のまま働かざるを得ないケースが多いのが現状です。
賃金格差を縮小するためには、正社員雇用の増加、日本語能力の向上、制度改革が必要です。
外国人労働者が適正な賃金を得られる環境を整えることが、日本の労働市場全体の発展にもつながるでしょう。